『オディッシー インド古典舞踊の祖
グル ケルチャラン モハパトラ』
イチアナ チタリスティ著 田中晴子訳 (2021)
日本でいえば人間国宝ともいえる、踊り手ケルチャラン モハパトラ師(1926-2004)の生涯の物語を、イタリア出身で過去40年インド、オディシャ州でインド音楽と舞踊を研究し続けてきた直弟子イリアナ チタリスティ博士が綴る、この本は献身と研究の成果です。イリアナ女史はケルチャラン師のインド古典舞踊復活の旅路を描きながら、二十世紀前半にオディシャ州の人々がどんなふうに暮らしてきたかを浮き彫りにしました。
ケルチャラン師の生きた時代の人々の暮らしには、根底に篤い献身の心(バクティ)がありました。バクティがケルチャラン師の踊りの真髄なのです。ケルチャラン師は誰とでも謙虚に気さくに話し、誰もがケルチャラン師の人柄に魅了されました。その踊りはこの世のものとは思えないほど美しく、バクティに満ちていて、感動の涙を誘います。
この本の訳出は私の師匠、高見麻子氏の願いでした。イリアナ女史と出会ったときにその話をし、翻訳を快諾してもらい祝福を受けました。
巻末には、過去40年間オディシャに通い続けた日本のオディッシーダンサー サキーナ彩子氏のエッセイ『私のオディッシー』を収録、日本の読者の水先案内人になってくださいました。サキーナ氏の半生を語るバイオグラフィーワークのプロセスを楽しくお手伝いできました。この本を日本の読者に紹介できてこの上なく幸せに感じています。
翻訳原稿を仕上げたのち、印刷ファイルを自分で制作し、オンデマンド出版で発表しました。つまり本作り全体を体験しました。
I was able to experience the whole process of book publication, including the translation of the book and designing a print-ready file.
読者の声
『グル ケルチャラン モハパトラ』、ゆっくり楽しみました。本当に価値のある、貴重な翻訳、いいお仕事なさいましたね。また、このように素晴らしいお方のお話を日本語で読むことができたこと、心から感謝します。
本の中で何度も繰り返されていたけれど、彼にとって芸術とは学校で学ぶようなものではなく、人生そのもの、目の前で起こっていること、もの、人びとから学び取られるものだ、ということに感銘を受けました。そして、踊りも詩も歌も日常のあれやこれやにも全身全霊で向き合った、とのこと。なかなかできないことです。
サキ―ナ彩子さんのお話もとても良かった。今、ここで起こっていること、それがどんなことであれ、それを慈しみ、そこから学ぶこと。私も忘れないようにしたいと思いました。本を読んでから、YouTube でケルチャランさんの踊りをみてみました。すごかった!
身体から、魂から、愛が噴き出ているような感じ。
世界は円、連続する円なのです。
それはあなたで始まり、あなたで終わるのです。
この言葉は心に深く残りました。- 小川聡子(ビート詩 研究者)